「提案内容は悪くない。でも、なぜか決まらない」──そんな“あと一歩届かない”営業の壁に、心当たりはありませんか?
いま求められているのは、“この1社”に刺さる戦略。動かない本命顧客を動かす鍵が、アカウントベースドマーケティング(ABM)です。
本記事では、ABMの基本から実践ステップ、ツール活用や成功事例までを営業視点で解説します。
目次
ABMとは?営業戦略における基本概念とその本質
ABM(アカウントベースドマーケティング)とは、「特定の重要顧客」に対して個別最適なアプローチを仕掛けるBtoBマーケティング手法です。
営業活動でいうところの「この顧客をなんとしても取りたい」という1社に絞って戦略を設計することに近く、広くリードを集めるのではなく、深く狙い撃つアプローチです。
ABMの営業視点での特徴は以下の3点です。
- 大口顧客や戦略的ターゲットに限定し、効率的に成果を上げる
- 複数の意思決定者にパーソナライズした提案を届けられる
- マーケティング部門と一体で、顧客ごとの専用戦略を構築できる
特に、以下のような営業課題を感じている場合、ABM導入が効果的です。
- リード獲得後の成約率が伸びない
- 重要顧客との継続的な関係構築が弱い
- 提案が「響いていない」と感じるシーンが多い
営業におけるABMのメリット・デメリットとは?
メリット
① 成約率・LTVの向上
パーソナライズされた提案により顧客の信頼を得やすくなり、結果として高い成約率・LTVが見込めます。
② 効率的なリソース配分
営業リソースを価値の高いアカウントに集中することで、無駄なアプローチが減り、効率的な営業活動が可能になります。
③ 複数の意思決定者に的確なアプローチ
ABMは、関与するキーパーソンごとに最適なコミュニケーションを設計するため、複雑なBtoB商談にも有効です。
デメリット
① 施策立案と実行に手間がかかる
個別最適化のため、アプローチごとの設計やコンテンツ作成に時間と労力が必要です。
② 即効性は低い
ABMは長期的な関係構築が前提のため、短期間での成果が出にくい場合があります。
③ 全顧客に適用できるわけではない
ROIが見込めるアカウントの選定が重要で、対象を誤ると効果が薄れるリスクもあります。
営業が実践するABMの5ステップ
ABMを営業活動に取り入れるうえでは、戦略の立て方から提案内容の設計、社内連携、成果の振り返りまで、すべての工程に一貫した流れが求められます。
ここでは、営業担当が現場で実践できる「ABMの5つのステップ」と、その前提となる準備事項を順を追って解説します。
ABM導入前に営業が準備すべき3つのこと
ABMを進めるうえで、営業側の事前準備が不十分だと、せっかくの施策も効果が出にくくなります。以下の3点は、導入前に必ず整理しておきたいポイントです。
①目標顧客とKPIの明確化
「誰に、どれだけの売上貢献を期待するのか」を数値ベースで設定します。商談化率や提案件数といった中間指標も決めておくと、評価と改善がしやすくなります。
②営業・マーケのコミュニケーションルール整備
「週次でデータを共有する」「MAのスコアが●点を超えたら営業がアプローチ」など、連携ルールをあらかじめ取り決めておくことで、スムーズな連携が可能になります。
③担当者ごとの役割の切り分け
マーケはデータ分析とコンテンツ準備、営業はアプローチ設計と商談対応といったように、担当ごとの役割を明確にしておくことで、無駄な重複や連携漏れが防げます。
STEP1. ターゲットアカウントの選定
ABMの成否を分けるのは、最初のターゲット選定です。成果を最大化するには、自社にとって「戦略的に重要な顧客」に的を絞る必要があります。
選定のポイント
- 売上貢献が大きい、もしくは成長性の高い顧客
- 意思決定構造や業界動向を把握しやすい
- 「案件規模 × 関係性 × 将来性」でスコアリング可能
STEP2. アカウント理解の深掘り
顧客ごとの課題や意思決定構造を深く理解することで、提案の精度が格段に上がります。営業としての“引き出し”を増やすフェーズです。
調査すべき情報
- 業界動向や競合の動き
- 過去の接触履歴、顧客発言、導入実績
- 意思決定者の関心領域や立場
STEP3. 提案内容・コンテンツのパーソナライズ
相手企業の状況に応じた「自分ごと」と感じられる提案が、ABMの核心です。個社ごとにカスタマイズしたメッセージ設計が求められます。
準備する内容
- 顧客課題と自社の解決策を結びつけた提案軸
- ロゴ入り資料や事例を含むオリジナルコンテンツ
- 汎用資料をもとにした柔軟なカスタマイズ
STEP4. マーケと連携し、アクションを統合
ABMでは、営業とマーケが「1つのチーム」として動くことが不可欠です。データと感覚を融合した連携体制が、施策の一貫性を支えます。
実践のポイント
- MAスコアや顧客反応に応じたタイミングで営業が動く
- セミナーやコンテンツの活用タイミングを共有
- 定例ミーティングでリアルな進捗をすり合わせる
STEP5. 定期的に成果を分析・改善
ABMは“回して育てる戦略”です。初回で結果が出なくても、定期的なレビューと修正が成否を左右します。
改善のための着眼点
- 商談化率・滞留要因・レスポンス率などの可視化
- 結果が出た施策・アクションの型化
- PDCAを週次・月次でルーチン化
ABMを支える4つのツール活用法
ABMの実践にはツール活用が欠かせません。とはいえ、すべてのツールを一度に導入するのは現実的ではないのも事実です。
営業部門が主導するABMでは、以下のような段階的な導入フローを意識するとスムーズです。