毎週の営業会議でKPIをチェックしているのに、なぜか成果が出ない──そんな“数字だけが先行する営業”になっていませんか?本当に必要なのは、「数字を追うこと」ではなく「行動を変える指標」です。
本記事では、営業成果を根本から改善する“指標設計の新常識”を、現場視点で解説します。
目次
KPIが機能しない営業現場の共通点とは
多くの営業組織が「KPIを明確にすれば成果が出る」と信じて疑いません。
しかし現実は、「目標を追っているのに売上が上がらない」「メンバーのモチベーションが低い」など、KPIの限界を感じている現場が増えています。
よくある失敗パターン
- KPIの達成が“目的化”している
→本来、KPIは「目的達成のための手段」であるにも関わらず、「アポ◯件」「訪問◯件」などの数字だけが一人歩きし、行動の質が置き去りにされています。 - KPIとKGI(最終ゴール)との関連性が薄い
→KPIの数字がいくら良くても、最終的な売上や契約に結びついていなければ意味がありません。 - 数値偏重で、行動の“質”が見えない
→数をこなすことに集中しすぎるあまり、「どんなヒアリングをしたのか」「顧客の反応はどうだったのか」といった本質的な活動が可視化されていないのです。 - メンバーごとの営業スタイルが違い、KPIがフィットしていない
→属人的な営業が色濃く残る組織では、画一的なKPIでは成果につながりません。現場に即した指標設計が必要です。
これらの課題を解決するには、KPIに加えて、より柔軟かつ多角的な「新たな営業指標設計」の導入が必要です。
成果につながる!営業指標設計5つの新常識
では、KPIだけに依存しない、成果直結型の指標設計とは何でしょうか。ここでは、BtoB営業組織が今取り入れるべき5つの新常識を紹介します。
1. KPIは“行動を変える装置”として設計する
ただ「数を追う」だけのKPIでは、現場は疲弊する一方です。
重要なのは、KPIがメンバーの“行動選択”に影響を与えるかどうか。つまり「何をすればいいか」が明確になるKPIでなければ意味がありません。
- Before:「週10件訪問」だけをKPIに→とにかく数稼ぎで質が低下
- After:「週10件訪問+提案受容率◯%」→ヒアリング・提案の質を意識した行動に変化
2. KGIとのロジックツリーを明確にする
営業KPIの多くは、“なんとなく”設定されがちです。しかし、KGI(売上や契約)との関係が曖昧なKPIは、どれだけ達成しても成果につながりません。
重要なのは、KGIから逆算して「どの数字がどこで効いてくるのか」を論理的に整理すること。これが、戦略的に動ける営業組織の第一歩です。
- Before:アポ件数を増やす施策を実施 → 商談化せず空振り多数
- After:KGI(売上)→成約率→商談数→アポ率と逆算 → 商談数の不足がボトルネックと判明し、中間指標強化に着手
KPI・KGI・KCIの違い
指標名 | フル名称 | 内容 | 例 |
---|---|---|---|
KGI | Key Goal Indicator | 最終目標となる成果 | 売上、契約件数など |
KPI | Key Performance Indicator | 成果達成に向けた行動量の中間指標 | 商談数、訪問数など |
KCI | Key Communication Indicator | 営業の“質”を可視化する定性指標 | ヒアリングの深さ、顧客の関心レベル |
3. 定性的な指標(KCI)を導入する
商談数や訪問数だけで、営業の価値は測れません。顧客の課題をどれだけ深く引き出せたか?提案はどれだけ刺さったか?といった、“営業の中身”を可視化するのがKCI(Key Communication Indicator)です。
数字に現れない“伝える力・聴く力”を評価することで、営業の質が底上げされていきます。
- Before:商談件数は増えたが、受注率は横ばい → 内容不明、改善の打ち手なし
- After:「課題の明確化度」「顧客の関心レベル」などをKCIとして可視化 → 提案精度が上がり、受注率が約2倍に改善
4. 営業プロセスをフェーズ分解してKPIを設計する
「アポ件数」「受注数」だけで営業を評価していませんか?それでは、どの段階に課題があるのか把握できず、改善アクションが後手に回ります。
営業プロセスをフェーズごとに分解し、それぞれに指標を設定することで、ボトルネックの可視化と即時対処が可能になります。
- Before:アポ数と受注数だけで管理 → 商談が進まない理由が不明
- After:初回接触→ヒアリング→提案→クロージングの4フェーズにKPIを設定 → 課題把握フェーズに改善余地ありと判明、資料改善で提案成功率が向上
5. 組織全体で「意味のある数字」を共有する
営業だけが数字を追っても、成果には限界があります。マーケティング・インサイドセールス・カスタマーサクセスなど、他部門との連携指標を持つことで、組織としての成果が加速します。
指標を「営業のもの」から「組織全体のもの」へ。部門間の壁をなくす視点が求められています。
- Before:インサイドセールスから営業への引き継ぎが属人的 → 商談化率が低迷
- After:「MAスコア × パス率 × 成約率」の横断指標を設定 → スコア基準の明確化と連携ルールの統一で商談精度が改善
指標再設計のメリット・デメリット
指標を再設計することで、営業組織には多くのポジティブな変化が期待されますが、一方で、注意点も存在します。