実機を見せ、価値を伝える。トーヨーコーケンの挑戦

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産業機器メーカーにとって、製品の価値を伝える以前に、乗り越えなければならない課題がある。そもそも自社や製品の存在を知られておらず、顧客の選択肢に入っていないという問題だ。

トーヨーコーケン株式会社は、ウインチ(巻上機)とバランサ(重量物アシスト装置)を二本柱とする重量物搬送機器メーカーである。創業から70年近い歴史を持ち、国内で高いシェアを持つ製品も展開している。一方で、同社の製品を初めて見た顧客から、「このようなものが世の中にあったのか」と驚かれることも少なくないという。

良い製品を持っていても、その存在や価値を知ってもらわなければ顧客には届かない。同社は、展示会やデモカー、販売店向けの勉強会、Webでの情報発信などを通じて、製品と顧客が出会う機会を広げようとしている。本稿では、間接販売を中心とする市場構造の中で、同社が製品の価値をどのように伝えようとしているのか、その取り組みを追う。

■Interviewee

トーヨーコーケン株式会社 代表取締役社長 渡邉 一人氏

良い製品があっても、知られなければ届かない

トーヨーコーケンの製品は、一度導入されると20年、30年にわたって使われることも珍しくない。製品寿命が長く、顧客から繰り返し選ばれていることは大きな強みだ。一方で、買い替えのサイクルが長いため、新しい顧客と接点を持つ機会は限られる。

渡邉社長は、同社の製品が産業現場を長年支えてきた実績の一方で、専門性の高い製品群ゆえに認知の拡大が課題だと語る。

「創業から70年近くになりますが、当社の製品をご存じなく、『そういうものがこの世の中にあったのか』と、初めて見たり聞いたりするお客様がまだ多くいらっしゃいます」

製品の機能や価格を比較してもらう以前に、まずは存在を知ってもらわなければならない。同社は、顧客に製品を知ってもらう方法を模索しながら、一つずつ取り組みを重ねている。

間接販売の中で、製品をどう伝えるか

トーヨーコーケンの販売は、商社や販売店を経由する間接販売が中心である。ただし、主力製品であるウインチとバランサでは、市場の構造や販売店の役割が異なる。

ウインチ分野は、用途ごとに専門メーカーが市場を分け合う業界だ。建設現場や工場設備、船舶搭載など、使用環境によって必要な機能が異なり、それぞれの分野に強みを持つメーカーが存在する。顧客や販売店も用途に応じてメーカーを使い分けており、同社のウインチは製品の価値を認めた顧客から、指名で相談を受けることが多い。

一方、バランサには複数の競合製品があるため、顧客が選択に迷う場面も少なくない。そうした競合環境だからこそ、渡邉社長は販売店の存在感を強調する。

「バランサにおいては、販売店さんの意見がお客様の選択に与えるインパクトが非常に強いと思います」

そのため同社では、商社や販売店に製品を理解してもらうための勉強会を定期的に開催している。ただし、販売店は顧客から相談を受けて初めて動くことも多く、製品を紹介したからといって、すぐに案件につながるとは限らない。

販売店への働きかけだけでは、まだ製品を知らない顧客には届かない。そこで同社は、顧客に直接製品を見てもらう機会も設けている。

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