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コダックが挑む営業戦略の進化──縮小市場で成果を上げる"レジリエント組織"のつくり方

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2012年の経営危機から印刷事業へと軸足を移したコダック。縮小市場の中で成果を上げ続ける秘訣は、「現場起点の営業改革」と「柔軟なリーダーシップ」にあった。上席執行役員・中川武志氏に、レジリエントな営業組織のつくり方を聞いた。

かつて世界の写真文化を支えたコダックは、いま印刷という領域で再び存在感を高めている。2012年の経営危機を機にBtoBの印刷関連事業へと軸足を移し、現在はオフセット印刷用プレートとデジタル印刷の二本柱で、持続的な成長を実現している。上席執行役員の中川武志氏は、営業現場を起点に事業を立て直してきた一人。縮小市場の中で成果を上げる“レジリエントな営業組織”のつくり方と、未来の事業構想を聞いた。

再建から始まった“現場主導”の営業改革

米国本社が連邦破産法第11章の手続きに入った2012年、世界のコダックは大きな岐路に立たされた。日本法人も例外ではない。「当時は、どの事業を残し、どこに集中するかを迫られた時期でした。私たちが選んだのは“印刷”の領域。お客様の現場と共に歩んできた事業です」と中川氏は振り返る。

生活のあらゆる場面で使われていたフィルムの需要が減少する中、コダックは映画用フィルム等の既存事業も残しつつ、オフセット印刷用プレート、ワークフロー、デジタル印刷機など印刷関連製品を中心としたBtoB事業へと構造を転換。特に印刷関連事業では「製品を売る」から「顧客の業務を変える」に営業の軸を移した。製品説明よりも、現場での導入効果を数字で示すことに重点を置いたのだ。この顧客起点の営業スタイルへの転換が、同社の再成長を支える原動力となった。

スピードと対話を重んじる営業スタイル

中川氏が現場に立ち続けて感じるのは、「スピード」と「対話」の重要性だ。「営業の世界では、対応のスピードがそのまま成果につながります。問題が起きたとき、途中経過も含めてどれだけ早く情報を共有できるか。その力がチームを強くします」

同社では社内外の情報共有を徹底し、現場からの報告・提案を迅速に反映する仕組みを整えている。見える化だけでなく、社員が意見を言える“言える化”を促す文化も根づいた。「発信は一方通行ではなく、反応と議論が生まれて初めて組織が動く。営業も同じです。お客様との対話の中から、必ず次の種が見つかります」

この双方向のコミュニケーションを支える一つが、毎週自らが発信しているメールマガジンだ。数字の報告だけでなく、成果の背景や現場の工夫を共有することで、チーム全体の知見が蓄積されていく。

成功を支えた“顧客目線”のプロモーション戦略

営業改革の象徴となったのが、2016年のオフセット印刷用プレートの新製品プロモーションである。それまでのコダックはグローバルで統一されたメッセージを発信していたが、日本市場では必ずしも効果的ではなかった。中川氏は「海外のやり方をそのまま持ち込むのではなく、日本の現場に合った言葉と方法で伝える」ことに挑んだ。

全国の印刷会社を訪ね歩き、運用の課題を丁寧に聞き取りながら提案を重ねる。環境対応や工程短縮、コスト削減など、顧客の経営指標に直結する価値を打ち出すことで信頼を獲得した。結果、この製品は現在も国内売上の約7割を占めるオフセット印刷用プレートの主力製品へと成長した。

「お客様の業務の中に入り込み、一緒に課題を解決する。営業の本質は、そこにあります」この経験が、コダックの営業文化を変えた。

紙が持つ“レジリエンス”と新たな価値

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