1954年、日本でまだプラスチックが一般化していなかった時代に創業した 石塚化学産業株式会社。創業以来、プラスチックリサイクルを軸に事業を展開し、現在は「リサイクル」「樹脂コンパウンド」「商社」の3事業を柱として成長を続けている。
近年は脱炭素や資源循環への関心の高まりを背景に、リサイクル材への需要が大きく変化している。そうした市場環境の中で、同社はなぜ選ばれ続けているのか。代表取締役社長の石塚惣一氏に、72年にわたる事業の歩みと今後の成長戦略を聞いた。
■Interviewee
石塚化学産業株式会社 代表取締役社長 石塚 惣一 氏
プラスチックリサイクルの先駆者として歩んだ72年
石塚化学産業の原点は、創業者である石塚銀一氏が米軍キャンプで目にした「捨てられるプラスチック」にある。
当時の日本ではプラスチック自体がまだ普及しておらず、ポリエチレン製の袋は極めて価値の高い素材だったという。米軍キャンプで大量に廃棄されるプラスチックを見た創業者は「何とか再利用できないか」と考えた。アメリカから中古の加熱機械を輸入し、自ら改造を重ねながらプラスチックリサイクル設備を開発したことが、同社の出発点となった。
創業後まもなく、同社は現在の事業基盤となる商社機能や樹脂コンパウンド事業へと領域を広げていく。リサイクル材を購入する顧客は新材も必要としていたため、海外から原料を調達して販売する商社事業を開始。その後、当時市場に出回っていた着色材の品質に課題を感じたことから、自社でコンパウンド事業を立ち上げた。
「プラスチックに関わる以上、きちんと世の中に役立つ品質を提供したい。そうした思いがあったと聞いています」
創業者のそんな思想は、現在も同社の事業の根幹に受け継がれている。
一方で、リサイクル事業の道のりは決して平坦ではなかった。原油価格の下落により新材価格が大きく下がった時代、多くのリサイクル事業者が淘汰された。リサイクル材は新材より安価でなければ選ばれにくく、価格競争に耐えられなかったためだ。
そうした中でも石塚化学産業が生き残ることができたのは、リサイクルだけに依存しない事業構造を早くから構築していたからだという。商社、コンパウンド、リサイクルという三つの事業が相互に支え合い、経営の安定性を高めてきた。
同社が長年大切にしてきた価値観は、「信用と信頼」である。
原料価格が急落した際も、契約した価格で仕入れを続けたことがあったという。目先の利益よりも約束を守ることを優先する。その積み重ねが、顧客や仕入先との強固な信頼関係につながっている。
「嘘をつかないこと、約束を守ること。当たり前のことですが、それを愚直に続けてきたことが今につながっていると思います」
3つの事業連携が生み出す「ワンストップソリューション」
現在、石塚化学産業の最大の特徴は、各事業の専門性を掛け合わせた独自の事業モデルにある。
商社事業では国内外から幅広い原料を調達し、樹脂コンパウンド事業では着色や機能付与を行う。そしてリサイクル事業では、そこで培った技術や品質管理ノウハウを活用しながら高品質な再生材を提供する。
それぞれが独立した事業ではなく、相互に知見を共有しながら価値を高め合う構造になっている。
近年、同社が掲げるキーワードが「ワンストップソリューション」だ。石塚氏は、単にモノを販売するだけでは顧客課題は解決できないと語る。
「商社だと『ないものはない』で終わってしまいます。しかし私たちはソリューションを提供する会社でありたいと思っています」
この「ワンストップソリューション」という言葉は、石塚氏がタイ駐在時代に自ら作り、現地で実践を積み重ねてきたものだという。帰任後、その考え方を日本の組織にも根付かせるべく、営業組織を「マテリアルソリューション部」「サステナブルソリューション部」へと再編した。
「商社部門はどうしても『ないものはない』という発想に陥りがちです。しかし、私たちは単なるモノ売りではなく、ソリューションを提供する会社でなければならない。そう強く社内に発信し、お客様の課題解決を起点とする体制へと変えました」
樹脂コンパウンド事業では、自社ラボを活用した小回りの利く開発体制も強みだ。大手メーカーが対応しづらい小ロット案件や短納期案件にも柔軟に対応できる。顧客ごとの要望に応じて物性評価や試作開発を行い、最適な材料設計を提案している。
品質管理においても妥協はない。リサイクル材の受入段階から厳格な検査を実施し、物性評価や化学物質の分析まで行う。
「一番重要なのは、仕入れの段階、つまり『入り口』です。ひとたび質の悪い原料が入ってしまうと、我々の設備でも完全に除去しきることはできません。それを防げるのは、72年の歴史の中で築いてきた仕入先様との強固な信頼関係があるからこそだと自負しています」
コスト削減から環境価値へ──変化するリサイクル材市場
近年、リサイクル材を取り巻く市場環境は大きく変化している。