「アカウントプランニングセッション、ただの会議になっていませんか?」
IT業界を中心に、多くの企業が導入しているアカウントプランニングセッション。しかし、実際に効果を出している企業は驚くほど少ないのが現実です。せっかく実施しても、
- 「とりあえずやってみたが、続かなかった」
- 「会議で話しただけで、具体的なアクションにつながらなかった」
- 「結局、毎回同じような議論を繰り返している」
といった課題に直面し、形骸化してしまうケースが後を絶ちません。
日本IBMの営業は必ずアカウントプランニングセッション(APS)を四半期に1回は実施しており、著者が在籍していた25年間において、一度も途切ることなく実施されていました。これは、代々の先輩も行っており、50年以上は続いている企業文化のひとつです。
高いものを高く売り続けているIBMはアカウントプランニングセッションをどのように活用しているのでしょうか?そこには「戦略的に実行する仕組み」が存在します。本記事では、IBM流アカウントプランニングセッションの「成果を生むポイント」を具体的に解説し、貴社の営業活動にどのように活かせるかを考えていきます。
目次
1.アカウントプランニングセッションとは?2.アカウントプランニングとアカウントプランニングセッションの違い
3.アカウントプランニングだけでは不十分な理由
4.IBM流アカウントプランニングの3つのポイント
5.アカウントプランニングセッションの効果がでない理由
6.成功企業の事例:アカウントプランニングで成果を出す方法
まとめ:IBM流アカウントプランニングで営業を変革しよう!
1.アカウントプランニングセッションとは?
アカウントプランニングセッション(Account Planning Session)とは、特定の顧客(アカウント)に対する戦略的な営業計画を立てるための会議です。
目的は、単なる売上目標の設定ではなく、「顧客の経営課題を深く理解し、最適なソリューションを提供する」ことにあります。
2.アカウントプランニングとアカウントプランニングセッションの違い
アカウントプランニング(Account Planning)は、特定の顧客(アカウント)に対する戦略的な営業計画書の作成です。主に営業担当者が個別に作成し、目標設定や施策を整理するために用いられます。
一方で、アカウントプランニングセッション(Account Planning Session)は、チームで計画を議論し、戦略を磨き上げるための会議です。アカウントプランニングで立てた戦略を組織全体で共有し、より具体的なアクションプランに落とし込むことを目的としています。
3.アカウントプランニングだけでは不十分な理由
多くの企業では、アカウントプランニングは行っているものの、「個人で作成した計画が実際の営業活動につながっていない」という課題があります。
- 計画が個人の営業担当者だけで完結してしまい、組織的な支援が受けられない
- マーケティングや技術部門など関係部門との連携できておらず、適切なリソースが活用されない
- 単なるドキュメント作成で終わり、実行フェーズが欠落している
このような課題を克服するためには、計画をチームで議論し、実行可能な形に落とし込む「アカウントプランニングセッション」が不可欠なのです。
では、IBM流のアカウントプランニングセッションでは、どのようにこれらの課題を克服しているのでしょうか?
4.IBM流アカウントプランニングの3つのポイント
①「どの案件を取るか」ではなく、「どのお客様の経営課題を解決するか」を起点にしている
多くの企業では、「今年はA社から〇〇円の売上を狙おう」といった目標設定が中心になりがちです。しかし、IBMではまず「クライアントの最大の経営課題は何か?」という視点からスタートします。
たとえば、ある製造業のクライアントに対して、
❌ IoT導入でコスト削減ができます
✅ 工場のダウンタイムを30%削減し、年間5億円の損失を防ぐ方法があります
このように、顧客の経営課題に紐づけた提案をすることで、商談の進め方が大きく変わります。
② 仮説検証を繰り返し、リアルタイムで最適化する
IBMの営業は、アカウントプランニングを「一度作ったら終わり」にはしません。
- 「このクライアントはDX推進に興味があるはず」→ 仮説
- 「実際にヒアリングをしてみると、DXではなくコスト削減が最優先だった」→ 検証
- 「では、コスト削減につながるソリューションを再提案しよう」→ 修正
この「仮説検証のループ」を回し続けることで、単なる計画書ではなく、実際に成果を生むプランへと進化していくのです。
③ 役割とアクションを明確にし、実行に落とし込む
IBMのアカウントプランニングでは、必ず「誰が、いつまでに、何をするのか?」を明確にします。
例えば、
- 営業担当:クライアントの課題に関する追加情報を取得(〇月〇日まで)
- 技術担当:提案の具体的なデモを準備(〇月〇日まで)
- マーケティング:類似事例のホワイトペーパーを提供(〇月〇日まで)
計画を「行動ベース」に落とし込むことで、会議だけで終わらない仕組みを作ります。
5.アカウントプランニングセッションの効果がでない理由
多くの企業で導入されているものの、次のような理由で形骸化してしまうケースが多く見られます。
- 課題1:計画を立てること自体が目的化し、実行に移されない
- 課題2:具体的なアクションプランが決まらず、営業現場で活用されない
- 課題3:お客様視点ではなく、自社の売上目標が優先されてしまう
このような状態では、どれだけ時間をかけても「計画倒れ」になってしまいます。
6.成功企業の事例:アカウントプランニングで成果を出す方法
ある企業では、IBM流のアカウントプランニングを導入したことで、受注率が30%向上しました。
以前は「何となく売れそうな案件」に時間を使っていましたが、お客様の経営課題を軸に営業を組み立てることで、ターゲット企業の選定が明確になり、商談の質が向上したのです。
また、あるIT企業では、営業の属人化を防ぎ、組織全体のパフォーマンスを向上させました。従来はトップ営業のみが結果を出していましたが、アカウントプランニングを活用することで組織全体の営業力を底上げすることができたのです。
まとめ:IBM流アカウントプランニングで営業を変革しよう!
アカウントプランニングセッションは、「形だけの会議」にするか、「成果を生む戦略会議」にするかで、ビジネスの成長スピードが大きく変わります。
IBM流のアプローチを取り入れることで、
✅ 「売上目標ありき」ではなく、「お客様の経営課題が起点」の営業へ
✅ 仮説検証を繰り返し、最適な提案へブラッシュアップ
✅ アクションを明確化し、確実に実行へとつなげる
この3つのポイントを実践することで、御用聞き営業から脱却し、成果を最大化する営業組織を目指しましょう!
貴社の営業組織に、今すぐ取り入れてみませんか?
著者プロフィール
加藤 夏美
N.K.ナーツ株式会社 代表取締役
中央大学卒業後、証券会社にて個人向けの飛び込み営業2年経験後、外資系IT総合メーカー企業である日本IBMへ転職し25年にわたり法人営業を行う。2020年には日本の営業では20名しか選ばれないグローバルのトップパフォーマーに選出され最高サラリー年収6602万円。
現在は、IBM流の成果につながるセールスイネーブルメントの構築・運営支援、IBM流の提案力アップのコーチング(セールス・エンジニア向け)、レンタル営業部長、レンタル営業企画により企業の営業部門の課題解決を行なっている。