電力変換技術は、一見すると表舞台に出にくい“縁の下の力持ち”のような存在だ。
だが、スマートフォンからEV、再生可能エネルギーに至るまで、あらゆる分野で欠かせない基盤を成している。
2014年の設立以来、ヘッドスプリング株式会社はこの“目立たないが欠かせない領域”に黒子として徹し、受託開発から評価装置、量産対応へと進化してきた。
次世代半導体を活用した先端技術の追求だけではなく、むしろ信頼を積み上げることで市場を切り拓いてきた同社の歩みは、BtoB営業における信頼構築の方程式を体現している。
顧客の背後で支える“黒子型営業”が、いま世界のエネルギー市場を静かに動かしている。
目立たず成果を出す──“黒子型営業”の出発点
パワーエレクトロニクスの開発には莫大なコストと時間がかかる。
創業間もないヘッドスプリングは、いきなり製品化に進むのではなく、まずは顧客企業の受託開発を積極的に引き受け、成果を確実に積み上げることで信頼を築いた。
まだ誰も手をつけていなかった次世代半導体SiCやGaNを活用した電力変換器の開発に挑み、顧客の開発を後方から支える“黒子”として存在感を高めていった。
受託開発を通じて得た知見をもとに「開発ツール」「評価装置」を提供し、顧客自身が開発を進めやすい環境も整えた。
単なる下請けではなく、開発を支えるパートナーとして進化したこの姿勢こそ、ヘッドスプリングの営業戦略の原点である。
展示会を戦略化せよ──継続出展で信頼を積み上げる
ヘッドスプリングにとって、展示会は“黒子が世の中に交わる唯一の舞台”だ。
普段は顧客の背後で静かに支える同社が、唯一自らを発信する場が展示会である。
「展示会に出ると『こんな会社があったのか』と驚かれることが多い。1回きりではブランドは築けません。出続けることでようやく信頼が積み上がる」と星野氏は語る。
即効性を求めずに出展を重ねるこの姿勢は、BtoB営業の“信頼型マーケティング”の実践そのものだ。
展示会を販促ではなく“継続的な接点づくり”と位置づけた結果、展示会経由のリードが商談化に至る割合は現在3割を超える。
短期的な成果よりも中長期の信頼構築に重きを置く“黒子型営業”の成果が、着実に数字となって現れている。
技術ではなく信頼を売る──日本製ブランドが武器になる
事業の目的地はインド市場だ。
電力不足が深刻な同国では、大型蓄電池や変換器への需要が急増しており、品質への信頼が最も重視される。
「インドでは日本製への信頼が非常に高い。中国製が多く出回る中で、品質と安定性の両立は大きな差別化になります。
私たちは技術力と信頼性を兼ね備えた“黒子の技術”で、日本同様にインド市場も開拓しています」と星野氏。
BtoBの営業では、製品スペックの優位性よりも「確実に動く信頼」が価値となる。
派手な提案ではなく、顧客の課題を静かに解決し、信頼を積み重ねる。
この日本的な誠実さを戦略に昇華させた“黒子型営業”こそ、同社が海外市場で選ばれる理由だ。
