アテナが考える、AI時代の営業と組織のリアル|後編

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営業やマーケティングの世界では、AIやMA(マーケティングオートメーション)、SFA(営業支援システム)といった言葉が当たり前のように語られるようになった。効率化、可視化、自動化──。確かに、技術は進化し続けている。

では、そうした時代において、営業の本質はどう変わるのか。あるいは、変わらないものは何なのか。

前編では、株式会社アテナが創業以来、"泥臭い営業"を手放さずに事業を進化させてきた背景をひも解いた。本編では、同社がこれからの営業、組織、そしてテクノロジーとどう向き合おうとしているのかに踏み込んでいく。

■Interviewee

株式会社アテナ 代表取締役社長 渡辺剛彦氏

AIやMAは「答え」にはならない

アテナでも、これまでにMAツールの導入を検討・実施した経験がある。しかし代表取締役社長の渡辺剛彦氏は、その結果を冷静に振り返る。

「正直に言うと、技術的にうまく機能しなかった部分もありました。でもそれ以前に、お客様目線の投資だったのか、という反省があります」

ツールを入れれば営業が変わる。そんな期待が先行してしまうと、本来考えるべきことが後回しになる。

渡辺氏が強調するのは、テクノロジーの是非ではない。"何のために使うのか"を考えないまま導入する危うさだ。

「楽をしようと思って入れても、楽になった分だけ成果が増えるとは限らない。むしろ、考えなくなることのほうが怖い」

人間の価値は「悩み続けること」にある

AIの進化について、渡辺氏は否定的ではない。その能力の高さは認めている。

「共通テストで満点を取るような存在ですよね。優秀なのは間違いない」

それでも、AIにすべてを委ねる未来には、慎重だ。

「人間は、悩むことができる。悩み続けること自体が、存在価値だと思っています」

社会の変化、顧客の行動、目の前で起きている事象。そこから「どんなニーズが隠れているのか」を考え続ける。この思考のプロセスこそが、営業や事業づくりの根幹だと渡辺氏は考えている。

AIは、その思考を助ける存在にはなり得る。しかし、人間の代わりにはならない。

クロスファンクショナルBPOが求める当事者意識

アテナは、自社のビジネスモデルを「クロスファンクショナルBPO」と位置づけている。複数の機能が連携し、顧客の業務を設計・運営する形だ。

その中で、渡辺氏が課題として挙げるのが「当事者意識」だ。

「部署が分かれると、どうしても権限や責任の話になりがちです。でも、お客様から見れば部署なんて関係ない」

営業がコーディネーター役を担う一方で、現場の担当者も業務全体を理解していなければ、単なる歯車になってしまう。それは、提供価値の低下につながる。

ただし、責任者を明確に立てれば解決する、とも考えていない。

「責任者を固定しすぎると、かえって組織全体の力は落ちる気がしています」

明確な"正解"を設定せず、全員が状況を考え続ける。それがクロスファンクショナルBPOにおける理想形だという。

ゴールを決めない営業・組織という選択

これからの営業組織をどうアップデートしていくのか。 その問いに対し、渡辺氏は意外な言葉を口にする。

「ゴールは、決めないほうがいいと思っています」

ゴールを設定して到達した瞬間、人は下り坂に入り始める。達成したかどうか、という評価軸が先に立ち、その先を考えることをやめてしまうからだ。

営業も同じだという。

「どうやってお客様に貢献したいか。そのモチベーションを、自分で生み出せる営業であってほしい」

組織や手法は唯一無二ではない。MAやSFA、AIも使い方次第で力になる。ただし、それらに依存しない良質な営業マインドを最優先で維持することが重要だと考えている。

新規営業を「考える力」の源泉にする

渡辺氏が繰り返し語るのが、新規営業の重要性だ。効率が悪く、成果も見えにくい。それでも、新規をやめるべきではないという。

「新規をやらないと、考えなくなる。考えなくなった営業は、もう営業じゃない」

どの企業に、どんな切り口でアプローチするか。どんなメディアを使い、どんなメッセージを届けるか。反応がなければ、なぜなのかを考える。

その試行錯誤自体が、営業力を育てる。

「経験に無駄はない。失敗に無駄はない」

アポが取れなかった経験も、断られた記憶も、次の営業の糧になる。その積み重ねが、顧客の本当のニーズに出会う力を養うと渡辺氏は語る。

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AI時代に残る営業の仕事とは

AIが進化し、効率化が進むほど、人間に求められる役割は変わる。だが、それは営業が不要になることを意味しない。

「むしろ、考え続けられる人間だけが、AIを活かせるようになると思います」

社会現象を読み取り、顧客の立場を想像し、自社が何を手伝えるのかを考える。その思考の出発点に立ち続けることが、これからの営業の仕事だ。

アテナが目指しているのは、特定の型にはまった組織ではない。それぞれの個性があり、自分で考え、動ける人が育つ組織だ。

変わり続けるために、変えないもの

アテナには、明確なゴールはない。あるのは、「お客様の役に立ち続けたい」というシンプルな意思だけだ。

営業を続ける。悩み続ける。考えることをやめない。

その姿勢こそが、AI時代においても同社が手放さない"変えないもの"なのだろう。

取材・文・写真 = Sales First Magazine 編集部

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