ランジェが描く可視化の力
「データの見せ方ひとつで、現場の理解が変わる」──医療の現場と社会の認識、その“見え方”をつなぐのが、ランジェの信念だ。
株式会社ランジェは、医療業界に特化したデータ分析サービスを展開する企業。主力製品「ランジェMAP」は、医療系オープンデータを自動で可視化し、医療機関や支援事業者の意思決定を支援するクラウドサービスだ。
営業や経営判断における“情報の非対称性”を見える化することで、「病院の現場を理解する」という営みを可能にするツールでもある。
プロダクトだけでなく、その届け方にも独自の工夫が詰まっている。同社代表・山崎淳氏に、営業・マーケティング戦略から今後の構想までを聞いた。
現場密着だからこそ伝わる、人の営業力
ランジェMAPの価値は、「誰に、どう使ってもらうか」で決まる。
同社の営業・サポートのメンバーは、単なるSaaSの販売者ではなく、医療現場や制度の仕組みにも精通した“専門翻訳者”だ。臨床・経営・行政、それぞれの視点をつなぎながら、クライアントの課題に寄り添う提案を行っている。
「こうしたスタッフは、プロダクトの機能だけでなく、その背景にある医療経営の現実や社会保障の構造まで語れる必要がある」と山崎氏は語る。
実際、病院経営者との商談では、ランジェMAPを単なる情報ツールとしてではなく、「病院のあり方を再定義するきっかけ」として提示する場面もある。
こうした“人による翻訳力”があるからこそ、単なる資料提示では得られない信頼が生まれ、次のアクションへとつながっていくのだ。
マンパワーだけでは届かない層へ、プロダクトの役割
その一方で、山崎氏はこうも言う。
「営業は人の関わりが何より大切だと考えていますが、すべてを人の手だけで届けようとすると限界がある。だからこそ、触れて“これは自分たちにも必要だ”と自然に感じてもらえるような仕組みが理想だと考えています。」
ランジェでは、展示会や動画経由で関心を持ったユーザーに対して、ログイン不要で即座に体験できるデモ環境を提供している。ユーザーが自ら“触って実感”するプロダクトレッドグロース(PLG)型の導入フローを整え、これまでアプローチが難しかった層との接点を築いている。
展示会の場では、ディスプレイに表示されたランジェMAPの画面を見た来場者が、思わず足を止める。画面を操作するうちに「これは自分たちにも必要だ」と自然に気づき、その場で担当者に相談を始める。
もはや営業資料ではなく、“プロダクトそのものが営業マン”なのだ。

「見える化」から「議論の出発点」へ
PLG型の仕組みだけではなく、その根底にあるのは“社会に橋を架ける”という思想である。