熟成ニンニク抽出液を使用した滋養強壮剤「キヨーレオピン」シリーズを主力製品とする湧永製薬。70年の歴史の中で同社が貫いてきたのは、薬局を通じたカウンセリング重視の対面販売スタイルだ。いま、その伝統に研究エビデンスを掛け合わせ、世界市場での拡大に挑んでいる。代表取締役社長・湧永寛仁氏に、同社の営業・マーケティング戦略の本質と今後の展望を聞いた。
一軒一軒の薬局に足を運ぶ──営業の原点
戦後間もない1955年に創業した湧永製薬は、創業者・湧永満之の「人間が本来持つ自然治癒力を高める」という理念を原点としてきた。その理念を具体化したのが、約2年の熟成・抽出工程を経て誕生した当時の「レオピン」である。
発売当初の営業は、まさに泥臭い活動だった。一軒一軒の薬局に直接足を運び、商品を試してもらい、顧客の声を収集しながら価値を伝える。こうして薬局の信頼を獲得し、薬剤師によるカウンセリングを通じて消費者に広まっていった。
「医薬品はイメージではなく、実際にその人に合うかどうかが重要です。だからこそ薬剤師による説明とカウンセリングを重視してきました」と湧永氏は語る。
顧客体験を軸にした高リピートモデル
湧永製薬の営業モデルの強みは、単なる「販売」ではなく「継続利用」に重点を置いている点だ。
同社が導入した「メンバーズカード」によるデータでは、初回購入者のうち、1年以内に再購入する割合は約50%。さらに2回目、3回目と継続するほどリピート率は上昇し、5回目以降では90%以上に達する。
この高い定着率を支えているのは、薬局でのカウンセリングに基づく顧客体験と、製品自体の満足度の両輪だ。
「商品価値そのものに加えて、薬局の先生方が1人ひとりに寄り添ったカウンセリングをしてくださる。その積み重ねが、長期的な信頼と高リピート率につながっています」。
研究と営業の連動
湧永製薬は、熟成ニンニク抽出液について長年にわたり基礎研究と臨床研究を重ねてきた。国内外1000件以上の学術発表を通じて様々な研究成果が報告されており、それらの知見が営業現場での説明に科学的な裏付けを与えている。
こうした科学的データに基づく営業資料を活用することが、薬局や顧客との信頼を支える基盤になっている。