Sales First Magazine編集部の槌谷です。今回は、営業DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるうえで重要な「戦略」と「戦術」の違いについてお話しします。
これらはどちらも営業DXを成功に導くための不可欠な要素ですが、混同しやすく、理解が不足するとデジタルツールの導入が期待する成果に結びつかないことも少なくありません。
営業DXは、デジタル技術を活用して営業プロセス全体を変革し、業務効率の向上や顧客体験の強化を目指す取り組みです。しかし、DXを進める中で、「何を達成すべきか」(戦略)と、「どうやって目標を実現するか」(戦術)があいまいになりがちです。DXの成果を引き出すためには、この戦略と戦術の役割を明確に理解し、それぞれに応じたアプローチを取ることが重要です。
では、営業DXにおける「戦略」と「戦術」について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
目次
戦略:ゴールの設定と長期的なビジョン
「戦略」とは、一般的に、達成すべき目標に向けた大枠の方針や道筋を設定することを指します。
営業DXにおける「戦略」とは、デジタル技術を活用して営業プロセス全体を最適化し、最終的に達成したい目標や方向性を定めることです。
戦略は、どの顧客層にフォーカスし、どのようなアプローチで市場にリーチするかを決定し、リソース配分や優先事項を明確にするための指針となります。これにより、営業活動の全体像が一貫性を持って進行し、組織としての成果に寄与します。
営業DXの戦略を策定する際には、売上向上やコスト削減の具体的なKPIに加え、顧客との長期的な関係構築も不可欠です。
これを実現するためには、自社の強みを活かし、競合との差別化を図りながら、ターゲット市場の顧客ニーズに応えることが求められます。こうした視点を持つことで、持続可能な成長を目指した戦略が描けるようになり、営業DXの成果を最大化する基盤が整うのです。
戦術:具体的な行動計画と実行ステップ
次に、「戦術」とは一般的に、目標を実現するための具体的な行動計画や実行ステップを指します。
これを営業DXに当てはめると、戦術は営業DXで掲げた戦略を具体的なアプローチや手法として実行に移すプロセスです。営業活動における戦術では、具体的な営業手法や顧客へのアプローチ方法を設定し、日々の活動に落とし込むことが求められます。
たとえば、CRM(顧客関係管理)システムを活用して顧客データを一元管理することや、AIツールを使って営業活動を自動化すること、さらに、ターゲット顧客の購買意欲を高めるためにパーソナライズしたアプローチを行うことも戦術の一部です。
戦術を設計する際には、設定した目標を達成するためにどの施策が最も効果的かを見極めることが重要です。 特にBtoB営業においては、複数の接点を通じて顧客と関係を築き、商談へとつなげるフォローアップが不可欠です。新規リードに対して「最初の接触から3日以内に再度コンタクトを取る」といった具体的なタイミングを決めることで、顧客の関心を維持し、成約につなげやすくなります。
このように、営業DXにおける「戦術」は、戦略を実現するための実行力をもたらし、目標達成へと導く重要な要素となります。
戦略と戦術の連携
営業DXで成果を最大化するためには、戦略と戦術を切り離すことなく連携させることが必要です。戦略は目標地点への大まかなルートを示し、戦術はそのルート上で実行する具体的なアクションです。これらをバランスよく調整することで、DXの効果を引き出すことができます。
例を挙げると、企業全体で「営業効率を高め、成約率を20%上げる」という戦略があるとします。この戦略のもと、CRMシステムを活用したリード管理、定期的なメールフォローアップ、商談のデータ分析などの戦術を組み合わせて実行することで、戦略的な目標が達成しやすくなります。
成果を引き出すための「戦略」と「戦術」の具体例
1.リード管理における戦略と戦術の一体化
営業DXでの効果的な戦略と戦術を構築する際、まず注目すべきはリード管理です。リード管理は、営業の成果を上げるうえで非常に重要なプロセスであり、DX導入の効果を測定しやすい分野でもあります。
そこで仮に、戦略として「見込み顧客(リード)の質を高め、商談の成約率を向上させる」ことを設定したとします。この戦略の実現に向け、以下のような戦術が考えられます。