“ガラス”を売るのではなく、“価値”をつくる
「単なる建材メーカーではなく、“建築の価値をともにつくる企業”でありたい」
そう語るのは、建材・ガラスの専門企業・株式会社デバイスの代表取締役 高田恭良氏だ。
デバイスのビジネスは、よくあるカタログ製品の卸ではない。建築家が描いた曲面や特殊形状のデザインガラスを、どう実現するか。設計段階からその構造をともに考え、技術検証を重ね、製品化して施工まで担う。言うなれば、“一点もの”をつくり続けてきた会社だ。
とはいえ、同社が目指すのは技術偏重の職人企業ではない。
「BtoBにおける提案型営業は、製品や技術があって初めて成り立つ。でも“いいものを作れば伝わる”ではもう通用しません。私たちはいま、“伝わる技術営業”へ脱皮しようとしています」
建材・設備業界のBtoBマーケティングは、いまだ属人的な紹介営業や展示会頼みの構造が根強い。そのなかで、同社が進める“営業の再構築”とは何か。そのヒントを探った。
認知されない技術は、存在しないのと同じ
同社のもう一つの柱である「グリーンフロア事業」では、自社開発の内窓製品「トロポス」を主力に展開している。超極細フレームによって“窓に見えない内窓”を実現し、建物の断熱性や遮熱性を高めることができる。
高田氏が現場で何度も直面したのは、「こんな製品があるなんて知らなかった」という反応だ。加えて、製品の独自性ゆえに、“どう説明するか”が最大の営業課題になっていた。
「最初は、その開発経緯から“インナーガラスユニット”といった名前で説明していました。でも正直、伝わらない(笑)。そこで広報と相談し、今では“次世代の内窓”と表現を見直しました」
言葉を変えることで営業資料や展示会パネル、ウェブサイトの打ち出しも一貫したものに刷新。“営業しやすい製品”へと変化させた。
その裏には、若手社員の率直な声があった。
「伝わると思っていた資料が、実はまったく伝わっていなかったんです。ベテランの視点と若手の視点を繋ぎ直すことで、営業もマーケも徐々に動き出しました」
展示会×Webコンテンツ×SNS──“成果が出る”導線を組み直す
営業再構築の第一歩は、展示会の戦略的活用だ。
最近の建築・建材展示会での出展では、ターゲットとなる設計事務所・不動産ファンド・建物オーナー層へのアプローチに成功した。
「正直、展示会一本勝負では厳しい。でも、“内窓製品”という領域自体がまだニッチなので、リアル接点での体験は欠かせません。そこにSNSやWebコンテンツで後追いする──そんな導線を整えています」
同社では展示会出展とあわせて、ホームページの改修、導入事例コンテンツの制作、論文や技術データのわかりやすい翻訳・発信を進行中だ。担当は高田社長を中心に、社内の営業・広報担当が横断的にサポートする体制になっている。
「たとえば大学と共同で行った効果測定データを、グラフと説明だけでは伝わらない。だからこそ、営業・広報が理解して、営業視点で咀嚼し直す。そのプロセスが重要なんです」
顧客の課題は"窓"ではない──真の営業対象を見極める
営業対象となるのは、窓を日常使用するテナント企業ではなく、建物のオーナーやファンド、設計者、不動産開発会社などだ。現場の意思決定者は施主本人ではなく、「運用責任者」や「管理責任者」であることが多い。