中日本産業が挑む"圧倒的な町工場"

記事ヘッダー

自動車業界の構造転換が進むなか、エンジン関連部品を主力とする企業には、大きな変革が迫られている。そうした環境下で、2024年の外部承継に伴い取締役として参画し、2025年にCEOへ就任したのが、中日本産業株式会社の松井憲太氏だ。銀行、M&A支援という"ものを生み出さない"立場から、ものづくりの現場へ。逆境とされる市場環境を前に、松井氏は「圧倒的な町工場」を目指すと宣言する。その言葉の背景には、数字と現場の両方を見据えた、静かだが確かな熱があった。

顧客にくらいつく──創業から続くDNA

中日本産業は、愛知県に本社と工場を構える金属パイプ加工メーカーである。創業は、名古屋銀行出身の創業者が30歳前後で独立したことに始まる。銀行員として製造業の財務書類を見続けるなかで、ものづくりの魅力を感じ、退職して立ち上げた。

当初は、機械も十分にそろっていない時代。金属パイプを手で曲げる"手曲げ"の内職からスタートしたという。自動車部品メーカーとの取引を通じ、顧客の要望に応えながら、徐々に設備と工程を拡張してきた。

松井氏が強調するのは、創業以来変わらない文化だ。

「お客様が求めることに対して、会社としてくらいついていく。その姿勢は昔も今も変わっていません」

他社では手を出さない設備や工程でも、ニーズがあれば取り込む。受け身ではなく、応える姿勢を持ち続ける。このDNAこそが、同社の基盤だと松井氏は語る。

逆境を"機会"と捉えた決断

松井氏は銀行、そしてM&Aコンサルティングを経て、製造業の現場に入った。支援する側として数多くの製造業を見てきたが、「ものを生み出す仕事」そのものに魅力を感じたという。

「銀行やM&Aは、有機物を生み出すわけではない。製造業は、実際にものが出来上がっていく。その過程に強い魅力を感じました」

異業種からの転身は、周囲から見れば異例のキャリアだったかもしれない。しかし松井氏にとって、銀行・M&Aで培った「財務の読み方」「企業価値の見極め方」は、製造業経営において明確な武器になると確信していた。数字で企業を見る目と、現場でものが生まれる過程への関心。その二つが重なったのが、製造業という選択だった。

製造業の経営を学ぶため三重県の企業に入社。しかしその後、現在の株主による中日本産業買収に伴い、社長就任の打診を受ける。32歳での決断だった。当時、同社の主力はエンジン周りのパイプ部品。EV化の進展を考えれば、市場縮小は避けられないと見られていた。外部からの視点を持つ松井氏の目にも、それは明らかだった。

「逆境と言われる状況でした。でも、それを機会に変えられるのではないかと。失敗しても経験になる。そう考えて飛び込みました」

若さゆえの挑戦ではなく、将来を見据えた意思決定だった。逆境を正確に認識したうえで、それでも飛び込む。そこにはM&A支援で培った、企業の可能性を見極める目線があった。

最初の100日間──組織を"ひとつ"にする

就任前、取締役として入社した松井氏は、まず現場の声を聞いた。そこで見えてきたのが、知立工場と岡崎工場の間に存在する心理的な分断だった。

もともと法人が分かれていた経緯もあり、同じ会社でありながら「知立は」「岡崎は」といった意識の壁が存在していたという。経営としても、工場別の収益把握が難しい構造になっていた。

2025年5月、両法人を合併。物理的にも心理的にも「一つの会社」へと再編した。

同時に進めたのが、数字で語る文化の浸透だ。

「設備を入れたい、効率が上がる、という話はあっても、どれくらい上がるのか、何本増えるのか、定量的に説明できないことが多かった」

銀行出身の松井氏は、徹底して定量思考を求めた。経済合理性だけでなく、投資回収の見通し、工程改善効果を数値で示すことを徹底した。その積み重ねにより、現場の数字リテラシーは確実に向上しているという。

一貫加工という競争優位

中日本産業の強みは、パイプ加工の一貫体制にある。切断、曲げ、端末加工、接合、ゴムホースの組付までを社内で完結できる。

工程ごとに専門業者へ発注する場合、物流コストや管理工数が増加する。一貫体制であれば、品質管理もリードタイムもコントロールできる。

特に象徴的なのが、真空熱処理炉だ。1台あたり1.3〜1.5億円規模の設備を複数保有する。自動搬送による無人化も可能なこの設備は、創業者が将来性を見込んで導入したものだった。

「当時、炉を使う接合ニーズがあったわけではありません。でも、今後伸びると判断して導入した」

その先行投資が、現在の競争力につながっている。

設計段階から入り込む営業戦略

続きをご覧いただくには
「BizArena」への無料会員登録が必要です。


無料会員登録で、以下の特典をご利用いただけます!

  • ✅ 全ての記事を閲覧可能
  • ✅ 最新のイベント・セミナー情報を優先的にご案内
  • ✅ 営業ノウハウ満載の最新記事をメルマガでお届け

自動化の記事一覧

Sales First Magazine のトップページへ戻る