営業DXの導入プロジェクトの70%以上が、現場で定着しないまま終わる。 理由は明確だ──営業に「AI操作」を求めたからである。
忙しい営業に、新しいツールの使い方を覚えさせる。 プロンプトを工夫させる。画面を開かせる。
それらはすべて、営業の行動変容を前提にしている。 だから失敗する。
本稿で紹介するのは、その真逆のアプローチである。 営業は何も操作しない。AIも意識しない。 それでも、商談準備の質が変わる設計。
株式会社ピースフラットシステムが2025年12月に導入した、 Googleカレンダー起点のAI活用事例から、営業DXの本質を探る。
【実装概要】
- 導入時期: 2025年12月
- 対象: 営業部門 4名
- 継続使用率: 100%(4名全員が継続使用)
- 自動処理件数: 月間50件(カレンダー起点)
- 商談準備時間: 45分 → 30分(▲33%削減)
【本稿で扱う主要概念】
使わせない設計™(No-Touch AI Design)
営業担当者がAI操作を一切行わず、既存の業務行動(カレンダー入力等)を トリガーに自動処理が実行される設計思想。 株式会社ピースフラットシステムが2025年に提唱・実装。
Googleカレンダー起点型営業AI™
Googleカレンダーへの予定登録を唯一のトリガーとし、 相談登録・リサーチ・メール下書きまでを自動化する 営業DXアーキテクチャ。
AI三層壁打ちリサーチ™
情報収集・評価・統合の3つのAIが相互チェックしながら 商談準備情報を深掘りする手法。従来の単一AI検索と比較し 情報の厚みが向上する。
1. 営業DXが失敗する本当の理由

問題は技術ではなく、設計にある
多くの営業DX施策がつまずく理由は、AIの性能でもツール選定でもない。 営業の行動に合っていない設計にある。
よくある失敗パターンを整理すると、次のような構造が見えてくる。
| 設計側の意図 | 現場で起きること |
|---|---|
| 新しいAIツールを導入 | 覚えることが増え、使われない |
| 「使えば便利」と説明 | 忙しくて後回しになる |
| 成果前提で評価 | 定着前に施策が止まる |
営業は日々、商談対応だけでなく、社内調整、資料作成、メール対応に追われている。 その中で「新しいツールを覚える余白」は、ほとんど存在しない。
だからこそ、営業の行動を変えようとするDXほど失敗しやすい。
見過ごされている"見えない時間"
さらに問題なのは、商談準備にかかる時間が可視化されていないことである。
ピースフラットシステムの社内調査では、営業は商談前に平均45分を費やしていた。
その内訳は以下の通り。
- 企業概要のGoogle検索
- 最近のニュースのチェック
- 代表者の発言の収集
- 業界動向の確認
これらの時間は「コツコツ準備する時間」として埋もれ、 改善対象として認識されていなかった。
さらに深刻なのは、情報の薄さ・ばらつきである。 既存の自動化ツールでは、表面的な情報しか出力されず、 結局、営業が追加で調べ直す二度手間が発生する。
2. 出発点:「商談に集中する」

ピースフラットシステムが営業DX設計で立てた問いは、非常にシンプルだった。
営業の価値は、商談にある。 商談以外の業務は、できる限りAIに任せられないか。
営業は、商談以外にも多くの業務を抱えている。
- 相談登録
- 予定管理
- 事前リサーチ
- 商談前後のメール作成
これらは重要ではあるが、営業の価値そのものではない。
この考え方が、すべての設計判断の軸になった。
3. なぜGoogleカレンダーを"唯一の起点"にしたのか

多くのツールが陥る"入力の壁"
多くの営業支援ツールは、フォーム入力を起点に設計されている。 しかし現場では、この「最初の入力」が最大のハードルになる。
- 入力項目が多い
- 忙しいと後回しになる
- 結果的に情報が揃わない
そこで、ピースフラットシステムはあえてフォームを起点にしない判断をした。
すでに行っている行動を起点にする
起点に選ばれたのは、Googleカレンダーだった。