山形県米沢市に拠点を置く株式会社ニューテックシンセイは、電子機器や産業用機器の製造を軸に成長してきた企業である。1980年の創業以来、同社の事業は大きく方向転換することなく、一貫して「顧客の課題に向き合う」姿勢のもとで広がってきた。その過程で、自社ブランド「もくロック」の立ち上げや、新たな技術領域への挑戦など、製造業の枠にとどまらない展開も見せている。なぜ同社は選ばれ続けるのか。その営業・組織の本質に迫る。
■Interviewee
株式会社ニューテックシンセイ 代表者 桒原晃氏
顧客起点で広がった事業の原点
ニューテックシンセイの事業の基盤は、創業初期に出会った主要顧客との関係性によって形づくられたという。顧客からの要望や相談に応え続ける中で、「こういうこともできないか」という新たな課題が持ち込まれ、それを解決していくことで事業領域が徐々に広がっていった。
このプロセスは、一般的な製造業のように製品や技術を起点に事業を拡張するのとは異なる。あくまで出発点は顧客の課題であり、「相談を受けた以上、何かしら解決できるはずだ」という前提が組織に根付いている。
具体的な例を挙げると、あるメーカーから「パソコンの信頼性評価をしたいが、どんな検査機器を用意すればよいかわからない」という相談が持ち込まれたことがある。同社はその要件定義から装置の設計・開発・納品まで一括して対応した。完成した仕様書がなくとも、相談の入口から関われる体制こそが、同社の差別化の起点となっている。
結果として、同社は情報通信機器の製造にとどまらず、産業用機器や各種試験機の設計・開発といった領域まで対応できる体制を築いてきた。
振り返り文化が生む“再現性ある組織”
三代目として経営を担う桒原氏が特に重視しているのが、「振り返り」の文化である。日々の業務終了後に、その日の課題や成果をチームで確認し、なぜうまくいったのか、なぜ問題が起きたのかを共有する。
このプロセスは単なる反省ではない。成功要因を言語化し、再現性を高めることに主眼が置かれている。個人の気づきや工夫を組織全体に循環させることで、組織としての学習速度を高めているのだ。いわゆるPDCAサイクルを高速で回すことが狙いだが、桒原氏がこれを当初から意識的に設計したわけではない。毎日の積み重ねがいつしかサイクルとして機能するようになった、というのが実態だという。
こうした積み重ねにより、結果として業績にもポジティブな影響が現れているという。日々の小さな改善の連続が、組織の競争力を底上げしている。
「あるもの」で価値を最大化する思考
同社のもう一つの特徴が、「あるもの」に着目する思考だ。設備がない、経験がない、といった不足に目を向けるのではなく、今ある人材・設備・ノウハウをどう活用するかを考える。
さらに「少し背伸びすればできること」に挑戦し続けることで、徐々にできることの範囲を広げてきた。この積み重ねが、結果として新たな技術領域や事業展開につながっている。
その象徴が、自社ブランド「もくロック」である。2000年代に既存の情報通信機器事業が海外との競合で縮小に向かい始めた時、桒原氏は「中国でも同じものが作れる製品ではなく、この地にいるからこそできるものは何か」と問い直した。米沢が四方を山に囲まれた盆地であり、森林の7割が広葉樹に恵まれた土地であることに着目。木材を素材として自社の精密加工技術と掛け合わせ、無垢材を1/100ミリ単位で量産加工するという世界初の技術で生まれたのが木製知育玩具「もくロック」である。現在、累計40カ国以上で展開されるまでに成長した。
選ばれる理由は“課題の言語化”にある
ニューテックシンセイへの相談は、明確な仕様が定まった案件だけではない。「こういうことがやりたい」「何に困っているのかははっきりしないが問題がある」といった、曖昧な状態での相談も増えているという。