モノマネしない名南製作所が、営業と開発を分けない理由

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木材加工機械メーカーとして創業73年の歴史を持つ、株式会社名南製作所。同社は、これまで活用されてこなかった木材を高品質な建材へと変換する技術を通じて、環境負荷の低減と産業の進化の両立を実現してきた。

その競争力の源泉は、技術力だけではない。「モノマネをしない」「全員が技術者である」という思想のもと、営業・開発・組織が一体化した独自の経営にある。

本記事では、同社がどのように営業とものづくりを結びつけ、成長を続けてきたのか。その構造と、これからの戦略に迫る。

■Interviewee

株式会社名南製作所 代表取締役社長 長谷川 英生氏

「モノマネをしない」から始まった、技術起点の経営

名南製作所の原点にあるのは、創業者の強い信念だ。

「機械をつくるにしても、絶対にモノマネはしない。モノマネは偽モノつくりになる。ゼロから考える。ゼロから考えることで世の中に全くないモノが作れる」

この思想は、単なる技術方針にとどまらず、組織づくりそのものに影響を与えている。実際、同社では「技術者をどう育てるか」が経営の中心に据えられてきた。

創業者はもともと、理想の働き方を求めて7つの会社を渡り歩いた人物だ。どこへ行っても満足できず、最終的に「自分でつくるしかない」と起業に至った。ところが創業から15年が経ち、会社が順調に成長した頃、ふと自分の会社を振り返ると「気づけば、自分が嫌だと思っていた会社と同じになっていた」という現実に直面する。

この危機感をきっかけに、組織のあり方を根本から見直す。そこから生まれたのが、ニュートン力学の勉強会であり、社員同士が給与を決め合う給与委員会であり、部課長制度を廃したフラットな組織構造だ。現在の名南製作所の基盤は、この時期に築かれた。

以降、同社は一貫して「技術者が育つ組織とは何か」を問い続けている。

未利用材を価値に変える──製品ではなく「産業構造」を変えた技術

同社の主力製品は、合板製造の第一のステップ――丸太から薄い板材を旋削加工するロータリーレース(原木を大根の桂むきのように薄く削り出す機械)だ。一見すると特殊な領域だが、その価値は単なる機械性能にとどまらない。

従来、細い丸太や曲がった丸太は、建材として使われず、チップ化されて燃料として消費されることが一般的だった。燃料として利用する場合も一定の環境貢献はあるが、建材として何十年も使い続ける方が、炭素を長期にわたって固定できるという点で、より高い環境負荷低減効果が期待できる。

しかし、名南製作所の技術はこうした「未利用材」を住宅部材へと変換する。建材として固定化した状態で何十年も使い続けることで、より長期的な炭素固定を実現し、環境負荷の低減に直接貢献する。

特徴的なのは、「良い材料を活かす」のではなく、「条件の悪い材料ほど価値を発揮する」点にある。曲がりや細さといった従来の弱点を前提に、それでも一定品質の製品を生み出す加工技術が、同社の強みだ。

「原材料が誰も利用しない条件の悪いものであっても、できあがる製品の品質水準は変わらない。その加工技術こそが、我々の強みだ」と長谷川社長は語る。

このアプローチは、単なる製品開発ではなく、資源の使い方そのものを変える「構造的な価値」を生んでいる。

営業が営業ではない──"全員技術者"が生む提案力

名南製作所の営業の特徴は、「営業専門職が存在しない」ことにある。

同社では、開発・営業・製造・総務を問わず、すべての社員が技術職として採用される。入社後はまず製造・開発を経験し、そのうえで各部署に配属される仕組みだ。

その結果、営業担当者であっても、単なる窓口ではない。顧客の現場を見て、技術的な観点から課題を理解し、その場で解決の方向性を構想できる。

「お客様の要望をそのまま持ち帰るのではなく、その先にある課題まで踏み込む。場合によっては、お客様の発想を超える提案をすることもある」

このようなスタイルは、営業と開発が分断されている企業では実現しにくい。さらに、営業自身が開発的な視点で受注を行うため、そのまま設計や改善にスムーズに接続できる。結果として、提案の質とスピードの両方が高まる構造になっている。

組織そのものが競争優位──共通言語としての物理学

名南製作所の組織を語るうえで欠かせないのが、ニュートン力学の勉強会の存在だ。

同社では、50年以上にわたり全社員によるニュートン力学の勉強会を継続している。「加速度」といえば「速度の時間的変化率」と全員が同じ定義で議論できる——この共通言語の存在が、技術的な議論の精度を高め、認識のズレを防ぐ基盤となっている。さらに同社では、人と人との関係性もまたニュートンの法則になぞらえて考えることができるとし、この物理学的な思考様式は技術開発にとどまらず、組織運営の土台にもなっている。

この姿勢は採用・育成にも貫かれている。入社後5年間は物理学をゼロから学ぶことが入社要項にも明記されており、共通言語の習得が技術者育成の出発点となっている。

この徹底した基礎重視の姿勢が、長期的な技術力の差を生んでいる。

階層をなくし、全員が意思決定する組織

同社には、一般的な意味での部課長制度が存在しない。組織はフラットであり、誰でも手を挙げればプロジェクトのリーダーになれる。

「こういうものを作りたいと言って手を挙げ、一人でやり始めてもいい。とにかく決まりは作らない」

さらに特徴的なのが、評価と報酬の仕組みだ。社員同士が互いを評価し、その結果をもとに給与が決定される。社長自身の報酬も例外ではない。評価には同社独自の「次元」という単位を用い、全社員100人が互いを評価し合う仕組みが機能している。

「人の評価をどう行うかを考えること自体が、組織を成長させる」

自由度の高い組織でありながら機能している背景には、こうした思想の積み重ねがある。

縮小市場の中でどう成長するか──技術の深化が、世界を動かす

国内の木材加工市場は、人口減少に伴う住宅着工数の減少により、長期的には縮小が避けられない。「野村総研の調査によると、2024年の82万戸台から2040年には61万戸台まで落ち込む見込みだ」と長谷川社長は説明する。

一方で、近年は建築基準法の改正などを背景に、木造ビルや低層木造建築物といった新たな需要も生まれている。合板はもちろん、LVL(単板積層材)など、計算で強度を担保できる木質材料への需要も拡大しており、こうした変化に応える機械の開発も同社の重要なテーマだ。

同社の技術力の根幹にあるのは、国内の顧客との長年にわたる対話である。現場の要望を起点に開発を重ね、磨き続けてきた技術が、結果として海外市場でも高い評価を得るようになった。その関係はこれからも変わらない。国内の顧客とともに次の技術を育て、その延長線上に海外展開がある、というのが同社のスタンスだ。

北米はその代表例だ。豊富な森林資源を持ちながら、合板加工技術の面ではまだ改善余地が大きく、同社の技術は現地にとって大きなアドバンテージに映る。40年以上前から北米市場への取り組みを始め、10年前からは戦略的な展開も本格化。口コミを通じて少しずつ市場が広がりつつある。

国内で積み上げた信頼と技術が、自然と世界へと伸びていく。それが名南製作所の成長の筋道だ。

技術がすべてを決める──名南製作所のこれから

今後の成長に向けて、同社が掲げる方針は明確だ。

「商品力を上げる。それに尽きる」

営業やマーケティングの強化ではなく、あくまで中心にあるのは技術開発である。世の中に存在しない機械を生み出し、それを必要とする顧客に届ける。この循環こそが、同社の競争力の本質だ。

AIや新技術の活用が進む中でも、同社が強調するのは「本質を見失わないこと」の重要性だ。長谷川社長はこう話す。

「IT技術やAI等新しい技術を取り入れていくと、あたかも簡単に新製品ができたように思える。でも実際には基礎となる技術の土台があってこそできること。一番大事なものを見失わないようにしなければいけない」

技術・組織・営業が分断されがちな現代において、それらを一体化させた名南製作所の取り組みは、BtoB製造業の成長モデルに新たな示唆を与えている。

取材・文 = Sales First Magazine 編集部

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