ユニクロの服を着たことはありますか?おそらく、一度は袖を通したことがあるのではないでしょうか。ユニクロの服って、価格が手頃なのに品質がしっかりしていて、長く着られるものが多いですよね。中国など海外で生産されていると知っていても、「それでもユニクロなら安心だよね」と思えるのはなぜでしょう?
それは、ユニクロが生産を丸投げしているのではなく、徹底した品質管理と生産工程のディレクションを自社で行っているからです。現地の工場に専門のチームを派遣し、生地選びから縫製、検品に至るまで、ユニクロ独自の厳しい基準をクリアできるよう、細かく指導しているんですね。
オリーブオイルもユニクロも、品質は「ディレクション」で決まる
実はこれ、私が先日体験した、あるオリーブオイルの話にも通じます。
オリーブオイルといえば、スペインやイタリアを思い浮かべる方も多いでしょう。当然、現地の広大なオリーブ畑で採れるオリーブは、それだけでも品質が高いものが多いです。しかし、同じ畑で採れたオリーブでも、最終的なオイルの品質は全く違うものになることがあるんです。
現地の人が、慣れた手つきで「雑に」収穫してしまうのと、日本人が細やかな作業工程をディレクションするのでは、出来上がりの品質に雲泥の差が生まれます。
収穫のタイミング、傷つけないように丁寧に手摘みする方法、搾油までの時間の管理、温度調整……。これら一つひとつの工程をどれだけ緻密に管理できるかで、香りが高く、風味豊かな最高級のオイルになるか、それなりの品質で終わるかが決まります。
つまり、「原材料の良し悪し」はもちろん重要ですが、それ以上に「生産工程のディレクション」が最終的な品質を大きく左右するということです。
マーケティングも「ディレクション」が命
この考え方は、マーケティングの世界にもそのまま当てはまります。
多くの企業が、素晴らしい商品やサービスを持っています。しかし、それがなぜか消費者にうまく伝わらなかったり、期待通りの売上に繋がらなかったりすることがあります。それは、商品の「原材料」にあたる商品力は高くても、それを世に届けるための「生産工程」、つまりマーケティング施策のディレクションが不足しているからかもしれません。
例えば、
- ターゲットとなる顧客をどこまで細かく設定できているか?
- その顧客に響くメッセージは何か?
- どのメディアで、どのようなタイミングで発信すれば効果的か?
- 顧客の反応をどう分析し、次の施策に活かすか?
これらすべてが、マーケティングにおける「生産工程」です。これらを一つひとつ細分化し、それぞれの工程を高い精度で実行できるよう再構築していくことが、マーケティングの成功には不可欠なのです。
現場の「ディレクター」を育てよう
そして、この「ディレクション」を成功させるために最も重要なのが、現場で指揮を執る「ディレクター」の育成です。
ユニクロが優秀なディレクターを海外に派遣するように、マーケティングにおいても、それぞれの施策を深く理解し、全体を俯瞰して最適な判断を下せる人材が必要です。
「SNS投稿はインフルエンサーに丸投げ」「広告運用は外部に任せっきり」では、せっかくの素晴らしい商品も、その真価を発揮することはできません。
現場の担当者が、それぞれの作業の「意味」を理解し、より良い結果を出すために自ら考え、行動できるようになること。そして、その担当者を束ね、プロジェクト全体を成功に導くことができる優秀なディレクターを社内で育てることが、これからの企業成長の鍵となります。
マーケティングは、単なる広告やSNS投稿ではありません。それは、商品やサービスの価値を最大化するための緻密な「モノづくり」であり、その中心には必ず優れたディレクションとディレクターの存在があるのです。
あなたの会社では、マーケティングの「生産工程」をどこまで細分化し、再構築できていますか?そして、その工程を指揮する優秀な「ディレクター」は育っていますか?
著者プロフィール

安藤 芳樹
「セブンチャート仕事術」開発者。セブンチャートインストラクター、オフィスミラクス代表
広告代理店(ADK)に勤務しながらドラッカーを実践。「5つの質問」で企業トップとの事業の定義を合意しながら経営者視点で商談を進め顧客に認められる。40歳の頃、ビジネス観や人生観に普遍の基盤をもちたくドラッカーに目覚める。その知見体得のために試行錯誤してたどり着いたのが「セブンチャート仕事術」。その体得のためにやった反復訓練は30000ページのチャートを作るにいたり、今も増殖中。さぬきうどんブームの仕掛け人であり、映画「UDON」のトータス松本の役柄モデルでもある。立教大学卒業。2021年12月23日 初の著書「チャートで考えればうまくいく」を上梓。