エコムが築いた“開発する営業”という勝ち筋

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製造業において不可欠な「加熱工程」。その裏側には、大量のエネルギー消費とCO2排出という課題が潜んでいる。株式会社エコムは、この領域において「加熱×省エネ」という独自の価値を打ち出し、顧客から選ばれ続けてきた企業だ。創業以来の祖業であるメンテナンス事業を軸にしながら、同社はなぜ競争優位を築くことができたのか。その背景にある営業・事業戦略の本質に迫る。

■Interviewee

株式会社エコム 代表取締役 髙梨 智志氏

加熱技術に「省エネ」という価値を重ねる

エコムの事業の軸にあるのは、加熱技術だ。鉄を溶かす、塗装を乾燥させる、食品を焼く——製造業における多くの工程は「加熱」によって成立している。一方で、この加熱工程は大量のエネルギーを消費し、CO2排出の大きな要因にもなっている。

同社が掲げるのは、「加熱しながら、いかにエネルギーを使わないか」というテーマだ。単に機械をつくるのではなく、省エネ性能そのものを付加価値として組み込む。これにより、顧客にとってはエネルギーコストの削減、そして社会的にはカーボンニュートラルへの貢献という二つの価値を同時に提供している。

特に近年は、製造業の大手企業を中心にCO2削減目標の設定が広がり、この領域への関心は急速に高まっている。社会の潮流そのものが、同社の価値を後押しする構造が生まれていると言える。

祖業が「収益の柱」に変わった理由

エコムの原点は、工業用ガスバーナーのメンテナンスにある。創業40年近くを経た今も、この祖業から派生する保守サービス事業が売上の約40%、利益の約半分を占める基盤事業へと成長している。

その理由は、メンテナンスという仕事の特性にある。設備が故障した際に対応するこの業務は、顧客から「ありがとう」と感謝されると同時に、継続的な関係を築くことができる。結果として顧客数は積み上がり、ストック型の収益構造が形成されていった。

さらに、地域密着で始まったこの事業は、徐々に全国へと拡大。単なる修理対応ではなく、継続的な保守サービスとして進化したことで、安定した収益基盤を確立した。創業当初の事業がそのまま現在の競争力を支えている点は、同社の大きな特徴である。

他社製品も「我々の仕事」——8割超を占める他社製メンテナンス

同社の保守サービス事業には、際立った特徴がある。手がけているメンテナンスの8割以上が、自社で製造していない他社製品への対応だという。

製造業の現場では、複数のメーカーの設備が混在するのが常態だ。にもかかわらず、他社製品まで対応できる保守業者は少ない。メンテナンスは手間がかかり、人材も集まりにくく、事業として成立させるには難易度が高いためだ。エコムはこの領域を組織化し、全国展開することで独自のポジションを築いた。社会課題である人材不足や技能継承の問題とも連動しながら、同社の事業は拡張してきた。

この「他社製品も断らない」という姿勢が、顧客との深い信頼関係を生む。一社で全ての設備を面倒見てもらえるという安心感は、競合との差別化として機能し、長期的な取引継続につながっている。

"改造ビジネス"という新たな市場を切り拓く

同社の事業がもう一段進化したのは、「改造工事」という領域に踏み込んだことにある。これは新規設備の導入ではなく、既存設備を省エネ仕様へと改良するビジネスだ。

製造現場では設備を20年、30年と使い続けるケースも多く、簡単に新規投資はできない。そうした中で「今ある設備をどう省エネ化するか」というニーズが生まれる。エコムはこの領域においても、自社製品に限らず他社製設備にも対応することで顧客接点を広げ、メンテナンス事業で培った信頼をそのまま改造提案へと転換している。

この改造工事という事業が成立する背景には、長年のメンテナンス実績がある。設備の内部構造まで把握しているからこそ、最適な改良案を提示できる。新規参入が難しいこの領域において、同社の蓄積は大きな参入障壁として機能している。

「開発する営業」が生み出す競争優位

エコムの営業の特徴は、「売る」ことではなく「開発する」ことにある。その象徴がテストセンターの存在だ。

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