アテナは、なぜ"営業の会社"であり続けてきたのか|前編

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営業やマーケティングを取り巻く環境は、この数十年で大きく変わったITの進化、顧客行動の多様化、組織の複雑化──。その変化に対応できず、姿を消していった企業も少なくない。

そうした中で、長年にわたりBtoB領域で事業を継続・拡張してきたのが、株式会社アテナだ。現在は総合的なBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを提供する同社だが、その出発点は、ダイレクトメールの発送代行業務だった。

なぜアテナは、時代の変化に取り残されることなく、事業を進化させてきたのか。その背景には、「営業」に対する一貫した考え方がある。

■Interviewee

株式会社アテナ 代表取締役社長 渡辺剛彦氏

ダイレクトメール発送代行から始まった必然

アテナの創業は1968年(昭和43年)。当時は、テレビ・新聞・雑誌といったマスメディアが情報伝達の中心を担っていた時代だ。その中で、ダイレクトメールは「販売促進の一つのメディア」として、着実に存在感を高めつつあった。

「創業者が、どういう構想で起業したのかを、私は細かく知っているわけではありません。ただ、世の中の流れや、お客様のニーズを"肌で感じる"タイプの人だった、というのは間違いないと思います」

そう語るのは、1998年に同社へ入社し、現在代表取締役社長を務める渡辺剛彦氏だ。創業者は、もともと製薬会社の販促部門に身を置いていた。その現場経験の中で、メーリング業務へのニーズを強く実感し、事業として立ち上げたと渡辺氏は振り返る。

当時のアテナは、今のような総合BPO企業とは程遠い存在だった。発送業務を中心とした、いわば「専門性の高い下請け」的な立ち位置。しかし、それは時代と顧客ニーズが求めた、極めて自然なスタートだった。

事業転換は「戦略」ではなく「結果」だった

アテナが現在のような総合BPOへと姿を変えていった背景を、渡辺氏は「明確な計画があったわけではない」と語る。

転機となったのは、インターネットの普及だ。紙媒体の需要が徐々に減少し、同時に社会構造は複雑化。企業の先にいる「消費者」の行動や価値観も、多様化していった。

「お客様である企業のニーズはもとより、その先にいるエンドユーザーの動きも強く意識せざるを得なくなった。その変化に、どう対応するか。小さな挑戦や模索を積み重ねた結果として、業務の範囲が広がっていった、という感覚です」

重要なのは、アテナが自ら主導して「BPO企業になろう」と舵を切ったわけではない点だ。あくまで、お客様から寄せられる相談や依頼に応え続けた結果、業務領域が拡張していった。

その過程では、当然試行錯誤もあった。ただし、渡辺氏は「お客様を実験台にすることはできない」と繰り返す。売上をいただきながら、同時に学ばせてもらう。そのバランスを常に意識しながら、少しずつ対応範囲を広げてきたという。

フロントからバックまで広がった理由

一般的にBPOと聞くと、経理や人事といったバックオフィス業務を思い浮かべる人も多い。しかしアテナは、コールセンター運営や顧客対応といったフロント業務、さらには受注処理や在庫管理などのミドル業務にも踏み込んできた。

その理由について、渡辺氏は「そこまでやらなければ、成果につながらなかった」と率直に語る。

「バックオフィスだけを切り出しても、お客様の本当の課題は解決しきれないケースが多かった。だったら、フロントも含めて一緒に考えたほうがいい、という判断です」

上場企業であれば、効率性や収益性の観点から、業務範囲を限定する判断もあり得る。しかしアテナは非上場企業だ。株主ではなく、顧客ニーズを起点に事業を広げることができた。この点も、同社の特徴の一つと言える。

「営業マンでありたい」という創業者の思想

アテナの営業文化を語るうえで欠かせないのが、創業者の存在だ。

「経営者である前に、営業マンでありたい、という人でした」

実際、創業者は自ら足を運び、関係性を築き、長年にわたって顧客との信頼関係を育んできた。その結果、アテナには「創業者が築いた顧客」が、創業者が亡くなった今でも数多く残っている。

営業とは、営業マンと顧客、つまり人と人との関係性をどう積み上げ、信頼へと育てていくか。それに尽きる。

これこそが今のアテナにも脈々と受け継がれる営業思想なのである。

紹介が多いからこそ、新規をやめなかった

現在のアテナの新規受注は、既存顧客からの紹介や自社ホームページからの問い合わせ案件が多い。それでも渡辺氏は、新規営業をやめるべきではないと考えている。

「新規をやらなくなると、営業力は確実に落ちます。初対面の人に、自分たちの価値をどう伝えるか。その経験を積まないと、営業マンとしての筋力が衰えてしまう」

営業マンが紹介案件だけに対応していると、知らず知らずのうちに「営業をしなくても仕事が回る状態」になる。それは一見効率的だが、長期的には危うい。

渡辺氏は、マーケット動向や社会環境の変化など、営業に必要な情報・知識を収集し、個別企業動向を調べ、自ら仮説を立てて動く──そんな地道な営業活動の重要性を、今も社内で伝え続けている。

数値結果よりも「役に立てたか」を軸にする営業

若い頃は、売上や利益の額に強くこだわっていたと渡辺氏は振り返る。二代目経営者として、創業者と比較されるプレッシャーもあった。

しかし今は、考え方が変わったという。

「結果よりも、本当にお客様の役に立てたかどうか。それを一番に考えたい」

その姿勢は、顧客対応の細部にも表れている。問い合わせに対して形式的に対応するのではなく、どうすればお客様の負担を減らせるか、どうすれば納得してもらえるかを考える。簡単ではないが、それを続けることが営業の本質だと考えている。

次に問われるのは「これから、どう変わるか」

アテナは"営業"をやめなかった。顧客の変化に向き合い続け、結果として事業領域を広げてきた。

では、AIやデジタル技術が進化する今、同社は営業活動や組織をどうアップデートしていくのか。その答えは、次回の記事で掘り下げていく。

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取材・文 = Sales First Magazine 編集部

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