展示会場で、ひときわ目を引くブースがあった。旋盤用のバイトホルダが、青・赤・緑・紫・白・茶・黄色と鮮やかに並んでいる。金属加工の現場ではあまり見かけない光景だ。その色彩が放つ軽やかさに、思わず足を止めた来場者も多かった。
出展していたのは、愛知県豊橋市に拠点を置く株式会社あおやま。ブースで対応してくれたのは、代表取締役の青山雄治氏と、息子で次期後継者の青山亮太氏だった。親子二代で展示会に立つ姿からは、事業を次の世代へとつないでいこうとする自然な覚悟がにじんでいた。
半世紀で2万品種──データが支える安定供給
あおやまは1977年の創業以来、旋盤用ホルダや治具の製造を手がけてきた。これまでに製造してきたホルダ・治具は2万品種以上にのぼる。国内自社工場での一貫生産を基本とし、プリハードン加工を採用した安定した品質を強みとしている。
同社では、製品ごとに加工工程順やNCプログラム情報をデータベース化して管理している。半世紀近くにわたって蓄積されてきた製造データは、単なる記録ではなく、顧客との長期的な関係を支える重要な資産だ。品番管理とデータベースシステムを駆使することで、必要な製品情報を迅速に引き出し、リピート注文にも安定した品質で応えてきた。
導入先からは、「迅速な納期対応」「品質の高さ」といった評価が寄せられている。
加工精度へのこだわりも妥協がない。0.001㎜単位での高精度測定能力を備え、顧客から求められる精度の高い加工を実現している。長年培ってきた加工技術と測定体制があるからこそ、細かな要望にも応え続けてこられた。
μ単位のコーティングが実現した、カラフルという選択

展示されていた「カラフルバイトホルダ」は、そうした技術の積み重ねを土台に生まれた製品だ。工具ブランド「Motl(Magician of the Lathe)」として展開されるこのホルダは、ISO規格チップに対応し、ノーズRは0.4/0.8/1.2の3種類に対応したものを用意している。
技術的に特筆すべきは、μ(マイクロ)単位で全面をカラーコーティングしている点にある。寸法公差に影響を与えることなく、防錆効果を確保しており、水や油によって塗料が溶け出す心配もない。
色分けすることで、工具の取り違いを防ぎ、現場での指示出しも直感的になる。導入先からは、「新人への指示が楽になった」「見分けやすい」といった声が実際に寄せられている。現在は7色展開となり、用途や工程ごとの使い分けがしやすくなっている。
完成させてから売らない、という選択
印象的だったのは、製品開発に対する姿勢だ。
「日本では、完成してから出すのが当たり前。でも、一度出して反応を見て、次を考えてもいいと思っています」
カラフルバイトホルダも、最初から完成形を目指したわけではない。展示会で実際に見せ、使い手の反応を受け止めながら、仕様や展開を少しずつ磨いてきた。完成度よりも、現場との対話を重ねること。その柔軟さが、あおやまの製品づくりを特徴づけている。
こうした姿勢は、顧客からの評価にも表れている。「提案力がある」「今までにない新しい開発品や試作品にも、ぜひ関わってほしい」。図面通りに加工するだけでなく、課題に寄り添おうとする姿勢が、信頼につながっている。
「工場に入りたい」をつくるために
カラフルという発想の背景には、人への視点がある。若い世代が製造現場に入りにくいと言われるなかで、青山氏は「見た目や雰囲気を変えることも、一つの入口になる」と考えている。
工具が整然と色分けされているだけで、現場の空気は少し変わる。5Sの徹底にもつながり、未経験者や実習生にも伝えやすい。単に製品を売るのではなく、現場全体のあり方を想像する姿勢が、製品の設計に反映されている。
実際、顧客からは「機能性の高さ」に対する評価も届いている。色という分かりやすさと、技術に裏打ちされた機能性。その両立が、あおやまの製品の特徴だ。
廃番品の代替、トレーサビリティ──技術で応える多様なニーズ
長年の経験は、多様な顧客ニーズへの対応力も生んでいる。廃番となり入手できなくなった製品についても、カタログ寸法や現物があれば、同等品を提案することが可能だ。
品番管理とデータベースシステムにより、トレーサビリティへの対応も行っている。「どこから購入した工具かわからない」といった課題にも応えられる体制が、「対応に関して非常に満足している」「丁寧に対応してもらえている」といった評価につながっている。
発注は1本から可能で、最小注文量の制限は特に設けていない。小ロットにも対応できる体制が、顧客との長期的な関係を支えている。
親から子へ、事業をつなぐということ
今回の展示会では、次期社長予定の亮太氏も並んで来場者対応を行っていた。前職ではIT系企業でサラリーマンとして働いていたが、現在は製造業の現場に立つ立場だ。
「プレッシャーはあります」
そう前置きしながら語る言葉の端々からは、自分一人の問題ではなく、従業員とその生活を背負う立場になったことへの実感が伝わってきた。立場が変わることで感じる重みを受け止めながら、現場に向き合っている様子が印象的だった。
一方、雄治氏に「もしもう一度選べるなら」と尋ねると、答えは迷いなく経営者だった。
「やりがい、かな」
現場で考え、決断し、形にしてきた時間。その積み重ねへの確信が、その短い言葉に凝縮されていた。
色の先にあるのは、相談しやすさ
カラフルバイトホルダは、派手さを狙った製品ではない。現場でのミスを減らし、人が動きやすくなる。そのための一つの手段だ。
長年ホルダをつくり続けてきたからこそ、「ここが使いにくい」「こうなっていれば助かる」という感覚がある。その積み重ねが、色という分かりやすい形で表に出ただけなのだ。
技術に裏打ちされた発想と、人へのまなざし。展示会のブースで感じた親子の空気感は、そのまま会社の姿勢を映していた。現場を少し良くしたい。そんな相談から、あおやまとの関係は始まっていくのだろう。

代表取締役 青山 雄治
事業内容:旋盤用ホルダ・治具の製造、工具ブランド「Motl(Magician of the Lathe)」展開
株式会社あおやま URL:https://u-aoyama.co.jp/
MOTL URL:https://u-aoyama.co.jp/motl/