検索が効かなくなった、という違和感
最近、BtoB企業のマーケティング担当者や経営者と話していると、 必ずと言っていいほど、こんな言葉が出てきます。
「検索からの流入が、以前ほど伸びなくなってきた気がする」
数字を見れば、急落しているわけではありません。 それでも、「何かがおかしい」という感覚だけは、はっきりと共有されています。
記事は増やしている。SEOもやっている。 にもかかわらず、以前のような手応えがない。 この違和感こそが、いま多くのBtoB企業が立っている地点です。
動いたはずなのに、手応えがない
変化を感じた企業は、当然ながら動きます。
- 記事本数を増やす
- キーワード設計を細かく見直す
- SEO施策をもう一段強化する
これらは、過去に成果を出してきた正攻法です。 実際、間違った判断ではありません。
ただ、そうした施策を積み上げるほど、 「やっているのに報われない」 という感覚が強まっていく企業も少なくありません。
動いている。けれど、前に進んでいる実感がない。 このズレが、焦りを生みます。

問い直すべきは「何をやるか」ではない
検索流入が減ったとき、議論はすぐに「次の一手」に向かいます。 しかし、本来立ち止まるべきなのは、そこではありません。
問うべきなのは、 どんな前提でマーケティングを組み立ててきたのか という点です。
多くのBtoB企業は、無意識のうちに、次の前提を共有してきました。
- 課題を持った人は、まず検索する
- 検索で見つけてもらえれば、検討の土俵に上がれる
- 良質な記事を出し続ければ、問い合わせは増えていく
この前提は、長い間、確かに機能していました。
当たり前だった前提が、静かに崩れ始めた
ところが今、同じ設計を続けていても、以前ほど成果が出なくなっています。
生成AIの普及によって、 人は「調べ続ける」よりも「要点をつかむ」ことを 優先するようになりました。
その結果、 どの企業の情報か/誰が語っているのか という文脈が、以前より弱くなります。
ここで重要になるのは、 見つけてもらうことより、思い出してもらうことです。
数字が示すものと、成果とのズレ
アクセス数や検索順位は、分かりやすく報告しやすい一方で、 事業成果と必ずしも一致しません。
検索流入が増えても商談につながらない。 問い合わせは来ても決裁者に届かない。 そうした「ズレ」が、以前よりも目立つようになってきました。
検索流入が減っていること自体が問題なのではありません。 本当に見直すべきなのは、 「検索を起点にすれば自然と商談につながる」 という考え方そのものです。

変わったのは「検索」ではなく「前提」
検索がなくなるわけではありません。 オウンドメディアも不要にはなりません。
ただし、それらは 「かつての役割のまま」では機能しなくなっている。 これが、生成AI時代の出発点です。
では、何が変わり、何が残るのでしょうか。
「集める」設計が行き詰まる理由
これまでのBtoBマーケティングは、 「どう集めるか」を中心に設計されてきました。
検索で見つけてもらい、記事で理解を促し、フォームへ誘導する。 この流れ自体が無効になったわけではありません。 ただ、それだけでは足りなくなっています。
生成AIが変えたのは、入口ではなく判断だ
生成AIは、検索エンジンを置き換えたわけではありません。 しかし、意思決定のプロセスには確実に影響を与えています。
比較検討の前に要点が整理され、選択肢が並べられる。 結果として、「どれを選ぶか」の判断だけが残りやすくなります。
このとき重要になるのは、情報の正しさだけではありません。
どの企業の情報か/誰が語っているのか/その会社の立ち位置は何か といった「認識」です。

流入が減っても、商談が途切れない会社
実際、検索流入が伸び悩む一方で、
- 指名での問い合わせが増えている
- 商談の質が上がっている
という企業も存在します。
彼らがやっているのは、SEOを捨てることでも、記事を減らすことでもありません。 接点を点で終わらせず、関係として積み上げる設計へ、 静かに移行しています。
次回予告
前提が変わったとき、マーケティングはどう変わるのか
次回は、生成AIがもたらした変化をもう一段掘り下げ、 「何が壊れ、何が残っているのか」を整理します。
著者プロフィール

渡辺 順也
株式会社イノベーター・ジャパン 代表取締役社長
社会構想大学院大学 コミュニケーションデザイン研究科 准教授
慶應義塾大学 商学部を卒業後、日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社(現・日立ソリューションズ)、株式会社サイバーエージェントを経て、2010年に株式会社イノベーター・ジャパンを創業。BtoB営業DXソリューション「Sales First」をはじめ、人のポテンシャルを最大限に引き出すことをパーパスに掲げた事業を展開。2017年から社会構想大学院大学の准教授として、デジタルコミュニケーションを専門として社会人教育にも従事。